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dimanche, 10 août 2008

当面する国際情勢と日本の安全保障課題
───インド洋における対テロ活動支援の意義と展望───(森本 敏)

 OCRなので随所に文字化けがあります.(例:縦長音→l,漢数字二→11)ので,その辺差し引いてお読みください.

 また,原文は極端に改行が少ないので,もう少し読みやすく整形する予定です.

 なお,期間限定公開とさせて頂きます.

  • アフガン・インド洋における対テロ活動

二OO一年九月一一日、アメリカで同時多発テロが起きました。これを契機として同年一O月七日、アメリカは事件の首謀者であるアルカーイダと彼らにテロ訓練センターなどの便宜を与えたタリバーンを掃討するため、アフガニスタンに軍事作戦を開始しました口実は、この作戦は直接、根拠となる国連安保理決議がなかったのです。しかし、引用された安保理決議二二六八(テロ事件直後の安保理決議)は、国際テロリズムに対し、各国がそれぞれに国際的な協力関係を行い積極的に措置することを求め、そのための個別的自衛権行使を確認するものでした。アメリカはこの一三六八を引用して、一O月七日からアフガニスタンへの航空攻撃と、特殊部隊一五OO人を投じてタリバlンとアルカーイダの掃討作戦(OEFNC不朽の自由作戦)を開始したわけです。一一月二二日には北部同盟が米軍の協力を得て首都カブールを陥落させ、二一月初めにはタリバlン政権が崩壊します。アフガンでは、その後の政治的プロセスを経て、二OO五年にカルザイ政権が成立しました。しかしながら、カルザイが大統領となった民主政権は首都カブールを中心に統治できているものの、各地は依然として非常に治安の悪い状態が続いています。アルカ1イダとタリバlンの一部勢力がアフガニスタン東南部、パキスタン国境にまたがる山岳地帯において活動していると見られ、これらの残党すべてを掃討することができない状態です。アメリカのOEFはすでに六年を過ぎ、従事するアメリカ軍兵力は現在、一万二000人、その他一九カ国(主としてNATO軍)が兵力八000人を投じています。

一方、首都カブ1ルが陥落した後、国連は国連安保理決議一三八六に基づき、治安維持のための多国籍軍(ISAF国際治安支援部隊)を設立しました。これには、現在、NATO二六カ国、その他一一カ国の計三七カ国が参加し、総兵力一二万九000人、米軍はそのうち一万五000人を投じています。ですから、これにOEFの一万二000人を加えると、米軍は計一一万七000人の兵士をアフガニスタンに投入しているわけです。繰り返しになりますが、OEFは直接の安保理決議がないアメリカ中心のテロ一掃討作戦であり、ISAFは治安維持のため安保理決議二二八六に基づき国連が編成した多国籍軍です。

この二つが現在、同時にアフガニスタンに展開しているわけですDISAFは首都カブ1ルを中心に、初めは西側に、次に南に移り、さらに東側へと順繰りに部隊を置いてアフガン全土の治安維持をしており、この兵力なくしては首都カブ1ルのカルザイ政権はおそらく一週間とは持たないでしょう。事実、カルザイ自身が彼の補佐官とともに暗殺未遂に遭い、補佐官は殺されました。また、カディlル副大統領も暗殺され、カルザイだけはかろうじて生きながらえたという状況で、韓国人人質事件に見られるように、アフガニスタン自体が軍閥・部族の強大な支配下にある固なのですD

ところで、先日、日本人医師が日本の支援を受けて単身、アフガンで支援活動を続けている姿が日本テレビで報道されました。そこに私も出演していたのですが、あの医師が活動している地域のアフガニスタン人はタリバーンのパシュツlン人です。タリバlンという運動に参加しているのはパキスタンとアフガニスタンの国境にまたがり、数千名規模で活動しているパシュツlン人であるイスラム教徒である。その中にイスラム過激派勢力がいる。NATOのほとんどの国がここに兵力を送り込み、相当な犠牲を払っている。イギリスおよびカナダ兵は七O人以上が戦死しているし、ドイツ兵も確か二四人が今までの戦闘で亡くなっています。約七万人規模の兵力がまだこの地域をテロ戦争の主戦場と考えて戦っているわけです。そういう場所で、彼は日本からの援助を受けてタリバーンに対して医療活動を行っているということです。

このイスラムのテロ組織は、タリバーン崩壊後に、アフガンからパキスタン、イランを経て、陸路でイラク園内に入って湾岸地域に行きテロ活動を行っている。もう一つのル1トは、パキスタンのカラチ西方から北アラビア海に出て、一部はペルシャ湾からサウジアラビアあるいはイラクに上陸、もう一つは、イエメンに入る、あるいは北アフリカのソマリアに入るという海路をたどっています。

海路を行くには、アフガン国内で採れたケシ||これから麻薬を精製するわけで、世界のケシの九三%はアフガン国内で生産されていますーーの原液を持ち出し、ダウ船(木造帆船)に乗り洋上に出る。ケシを精製してできた麻薬は、高額でありアフガニスタンの収益の大半を占めています。現在、麻薬密輸で得た資金がイスラムのテロリストに資金として流れ、それ以外に、武器・弾薬を買い、海路を戻って、自分たちの勢力に補給しているといった状態です。

現在、イスラムのテロリストを洋上で捕捉し、臨検後に武器・弾薬・麻薬を押収し拘束するOEFlMIO(冨旬EEOEZE目立甘口。℃2巳芯ロω日向上川止活動)||これは、その後MSO(海上治安活動)と呼ばれていますーーが実施されています。現在、ここに八カ国が艦艇一七隻を送り込んでいます。

二OO一年、小泉政権(当時)の支持率が高い時期に、政府内で日本の支援策を検討しました口しかしながら、OEFやISAFという地上戦への自衛隊派遣は不可能である。理由はアフガンは戦闘地域でもあり、武器の使用、武力の行使は必要不可欠である。兵員にとり危険であるだけでなく、憲法上も自衛隊派遣はできないと考え、ある程度の治安の回復を待つこととし、洋上での支援を考えました。この洋上における対テロ支援活動は、連合部隊の編成になっています。指揮官はローテーションで決まっていて、現在はパキスタンの海軍少将です。日本はこれに参加して臨検をすることができないかと考えました。しかし、これにもかなり無理があります。

まず、武器・弾薬を持って入るイスラム教徒を臨検して捕捉することは、当然彼らの反撃の可能性が考えられます。日本の海上自衛隊を、これに応酬するという洋上での武力行使の作戦任務を分かっていながら派遣することはできない。日本ができることは、せいぜい彼らに燃料補給をして後方支援をすることでしかない。そこで、二OO一年一一月、日本は「テロ対策特別措置法」(以下「テロ特措法」)を成立させ、補給艦二艦、これらを守る海上自衛隊の護衛艦三艦の計五艦を送り込み、以来、現在まで支援してきましたD

この最初の「テロ特措法」は二年の時限立法でしたが、二年たった二OOコ一年、小泉政権の支持率が高いこともあり、期間を更新しました。短い衆参両院の審議で更新され、いよいよ二OO六年にその期限が切れる時点で、辞任が確定的であった小泉さんは、この法の更新をしないことを周囲に漏らすようになったので、町村信孝外務大臣(当時)、石破茂防衛庁長官(当時)が首相に、日米関係を考えると到底それはできない旨を述べ説得したわけです。結局、小泉さんの判断は一年の更新に収まり、この法律は二OO七年一一月一日に期限切れとなりますので、一一月二日、艦長は命令を受けて帰国することになります。

今春(二OO七年)くらいからこうなることは分かっていましたが、通常国会はそれをできなかった。それには二つ理由があります。一つは、参議院選挙を控え、通常国会の会期をそのために延長することができなかったことがあります。もう一つは、この通常国会で優先度の高い案件は「イラク特別措置法」(以下「イラク特措法乙でした。この法律も二OO七年七月コ二日で切れることになっていました。従って、この通常国会では「イラク特措法」の二年延長を最優先にしたので、「テロ特措法」の審議は秋の臨時国会まで先延ばしにして、通常国会を終え参議院選挙に臨みました。参議院選挙で苦戦はするものの、過半数を維持できれば秋の臨時国会で勝利できると、当時の自民党は考えていました。しかしそうはならなかったのは、ご承知のとおりです。

安倍政権(当時)は、「テロ特措法」をさらに延長する法律を臨時国会に上げようとします。衆議院で審議可決したとしても、参議院に回したときにどうなるか。現在の憲法規定では、衆議院で可決しても、参議院で六O日以内に採決しなければ衆議院の採決をもって議決とすることになっています。つまり六0日間、参議院で継続審議してしまうと、期限切れとなって、海上自衛隊は戻らないといけないD参議院で否決しようが可決しようが、法律上失効になってしまいます。従って、早い時期に臨時国会を開会しなければいけないわけで、計算上は八月のお盆前に開会しなければいけなかった。ところが、安倍総理は参議院選挙後に、財界人二OO人を連れて、インド、インドネシア、マレーシアを訪問し、そのチャンスを失ってしまいますD帰国して、臨時国会前に第二次安倍内閣を成立させ、九月に臨時国会を開会、施政方針演説を読み上げた後で辞任を発表したのは、ご承知のとおりです。

こうなると、臨時国会で「テロ特措法」の更新手続きを取ってみても、一一月一日の期限切れ前に衆参両院の通過は到底、無理です。政府与党は、新法を通して、仮に一一月一日に海上自衛隊が戻ってきても、新法を成立させて新たな根拠で、再度派遣し直す。その聞の空白はやむを得なしと考え、手続きを進めていったわけです。不思議なことは、今まだ有効なこの特別措置法を、さらに延長して、海上自衛隊の活動を継続しようとしていた人が安倍さんなのです。ですから、総理辞任前にどういう論理構成になっていたのか。辞任当日、安倍さんは、言わば一騎討ちの会談を小沢さんに申し込み、そこで説得して根回しをしようとしていた節がある。しかし、小沢さんはこの会談を受けなかった。万策尽きた安倍さんは辞任を決意します。辞任直前の安倍さんは、論理的に思考できるような状態ではなかったのではないかと思います。

政府与党は、「テロ特措法」の臨時国会会期中での更新は、事実上参議院を野党に握られている限り無理であると判断して、初めから新法の準備をしていたわけですD結果としては、安倍総理の辞任で国会に三週間の空白ができる問、福田康夫内閣が成立して、そして新法の形ができあがり、閣議を通過し、一O月一一一一目、衆議院で趣旨説明が行われるところまできたわけです。

インド洋における海上自衛隊の活動に対して、政府の考えは次の二点であります。

一つは言うまでもなく、この地域に依然としてテロリストたちが潜み、ここを基点としてヨーロッパ、アメリカ、アジア等にイスラムのテロ行為が行われると国際社会は見ている。この地域はイスラムのテロの本拠地であり、アフガン国内で失った訓練センターを新しくパキスタン国内でつくり直し、そこで訓練を受けたタリバーンが再編され、陸路、海路を通って世界に出ていっている。まさにこの地域こそがテロの主戦場である。だから、現在三七カ国が参加して、大変な犠牲を払っている。ロシアと中国を除いて、自由社会の大国のほとんどがこの活動に参加している。そのような状況下で、日本は国内法がないからという理由で、この地域から抜け出すことは国際テロに対する国際社会全体の活動からの離脱を意味するもので、主要国日本としてできる話ではない。国連の安保理常任理事国入りを切望し、また主要国として附界から期待を受ける日本が、これに対して直接参加するどころか、燃料補給だけの支援活動からも抜け山すことはできない、という理屈です。

第二は、アメリカとの同盟関係です。

アメリカがこのインド洋にこだわる理由は、パキスタンとの関係があります。ここから出航するダウ船はパキスタン船籍で、乗組員はパキスタン人、言葉もパキスタンの言葉です。しかも、領海内はパキスタン海軍の管轄にあって、公海では連合部隊が捕捉・臨検をやっている。パキスタン海軍はこの連合作戦に参加しているが、パキスタンはイスラム国であり、更に米英の燃料の質がパキスタンの艦艇には合わないという技術的必漣噛もあって、英米の補給艦から補給を受けることを快しとせず、日本の海上自衛隊にだけ頼っている。従ってパキスタンの日本への期待は極めて大きく、パキスタン海軍をこの作戦に引きとどめているのは、明らかに日本の海上自衛隊の貢献である。絶対ここから抜けてくれるな、というのがアメリカの強い要望であります。従って、日米同盟の多くの案件のうち、トップレベルの案件が、このインド洋における海上自衛隊の作戦の継続なのです。このアメリカの要望を蹴って帰ることは、日米同盟関係の文脈であり得ることなのかということです。

この海上自衛隊の活動は各国から高い評価を受けておりますが、その理由は三つあります。第一は、日本の海上自衛隊の輸送艦の能力です。船舶を一定行動で波の高いインド洋で走行させながら高速で燃料補給するのですが、アメリカ海軍の補給艦だと一時間半くらいかかる補給を、日本の海上自衛隊は四O分くらいでできる。しかも一度も間違ったことがないという、非常に練度の高い技量が高く評価されています。

第二は、これまでの四年間、約二二O億円という資金を投じてこの作戦を行っているということです。つまり、日本の防衛費を使つての燃料補給ですので、無料なわけです。現在、原油の値段は非常に高く、先進国ならいざ知らず、パキスタンやポルトガルなど、必ずしも国内経済が豊かとは言えない海軍への燃料補給ですから、彼らにとっては非常に恩恵が高いわけです。

第三は、日本はペルシャ湾に石油の九六%近くを依存しておりますので、日本にとってこの海域は正に重要なシ1レlン防衛の拠点であります。日本とペルシャ湾を往復するタンカーの主要交通路にあたりまずから、ここに海上自衛隊の艦艇を送って貢献していることにより十分な情報が入手できる。これ自体が日本のシ1レ1ン防衛のための活動を象徴するものである。日本のエネルギーの安全保障の意味からも、この貢献は非常に意味があると考えているわけです。

  • 活動の合法性・適法性

海上自衛隊の活動が、たった二艦で四年間に二二O億円を拠出していると言ったら、皆さんはべらぼうな金額に思うでしょうが、戦闘機一機、例えばF日は約一OO億円しまずから、年間五O億円ほどでこれだけの国際貢献をしている。つまり効率の高い日本の海上自衛隊の支援活動の継続は危険性もないので必要であると、日本政府は国民に対して強調してきでいるわけです。

ところが、民主党はこの活動の是非と必要性を一度も口にしたことはありません。小沢一郎代表は、国連安保理決議に基づくインド洋への海上自衛隊の派遣は国際法上当然のことで、我が国憲法はそれを認めていると言っています。つまり、国際社会が安保理決議に基づき活動しているISAFに、我が自衛隊を出すことは、日本国憲法からみて何らの問題もないとする観点に立つ考えです。例えば、国連の事務総長に日本人を推薦しようとしたとします。現在は政基叫ん前韓国外交通商相が務めていますが、日本が立候補をして、その人が当選したとします。当選したその瞬間に、彼は日本人ではないと言っているわけです。つまり彼が多国籍軍を指揮して武力行使をしようが、日本国憲法は彼を縛れない。彼はもはや国際社会のために働く国際人である。裏を返せば、日本人だが日本国籍もない、日本のためにも働いてはいけないという考えです。こ

れは国際職員としての有り様です。自衛隊を国連安保理決議に基づき集団安全保障に出動した瞬間に、我が国の自衛隊員ではなくなり国際職員になる。それを我が国憲法がどうして縛れるのか、という論理です。法制局は「一瞬はそういうことがあり得るかもしれないが、しかし武力行使が明白な任務に自衛隊を内閣総理大臣の命によって出動させることは、その行為自体が憲法違反である」と言っていますが、小沢代表は出してしまったら憲法とは関係ないでしょうという考えで、法制局は、出す行為自体が憲法違反であるということですので、水掛け論です。これに対して石破防衛大臣は憲法違反であると、小沢代表の論調をバッサリ切っている。私も先日のNHK「日曜討論」で、論理が破綻していると言ったのですが、これは小沢さん一流の考えであり、今に限ったことではありません。そもそも小沢さんが憲法問題について小沢調査会のときから二O年来温めてきた基本的な考え方なのです。国連安保理決議があって、閏連安保理決議のもとに集団安全保障に自衛隊を出動させることは我が国憲法で縛れない、とする論理です。

OEFは安保理決議ではなく、アメリカが個別自衛権を行使して行っているわけで、そのアメリカに日本が補給支援であれ、支援すること自体が集団的自衛権行使に当たる。我が国憲法を改正して集団的自衛権を行使するならいいが、憲法を改正せずに集団的自衛権を行使するのは憲法違反である。だからやるべきではないという結論になります。

そうなると、危険な地上作戦に陸上自衛隊や航空自衛隊を派遣することはよくて、どこからも攻撃されないようなインド洋で海上自衛隊が燃料補給することは憲法違反であるとするのは、どういう意味合いを有しているのか。常識的に考えても、アフガンのテロの拠点に自衛隊が出動したら危険と分かっているのに、しかも武力行使、武器を使用することも分かっているのに、この行為は安保理決議があるから承認できる。しかし、アメリカ軍を日本が後方支援することは安保理決議がないから憲法上許されない。この論調は一般の国民感覚の理解を超えています。

  • 新措置法制定と活動継続に伴う諸問題

さて、以上が二週間ほど前までの論理でした。ところが現在、様子がすごく変わってきています。一O月二三日に国会での趣旨説明が始まり、次いで衆議院の審議が始まります。現在の特措法は衆議院四日、参議院四日で通りましたが、今度はそうはいきません。趣旨説明が始まる前に、また始まってからも、衆議院の審議が始まるかどうか分かりません。なぜなら、守屋前防衛事務次官の証人喚問などの問題が山積していまずから、民主党は簡単に審議しないと思います。それがようやく開始されたとしても、質問に対して情報開示がないとか、防衛大臣の説明が不十分だとか、あるいは提供した油がイラク作戦に使われているとか、そういう話が延々と続いて、衆議院の審議が長引くことが確実です。しかし、これを採決してくれれば、衆議院は与党が三分の二以上の議席を持っていまずから可決できます。次に参議院に回しますが、当然否決するでしょう。もし参議院が否決すれば、直ちに衆議院に戻して、衆議院で三分の二以上の再可決をすれば法律が成立します。

昨日(一O月一二日)のテレビ番組中に、私は自民党の伊吹文明幹事長に質問しました。彼の答えは明快で、ぜひとも臨時国会の会期中に衆議院を可決したいと言っていました。現在は一一月一O日までは臨時国会の会期が決まっています。会期をどこまで延長するか知りませんが、延長することになると思います。衆議院で可決すれば参議院に回しますが、参議院で審議中に会期が終われば廃案になってしまいます。従って、与党は衆議院の審議のまま臨時国会を終えて、継続審議を可決する。継続審議は衆議院でしまずから、与党の賛成多数で通過します。再び通常国会で審議し直して、二OO八年一月末からの通常国会で素早く可決させ、参議院に回すD参議院はすぐに審議ができません。なぜなら、参議院はこれを審議する委員会は「参議院外交防衛委員会」(以下「参外防」)以外ない。衆議院は「テロ特」という特別委員会がありますが、参議院は委員会が一つしかありませんので「参外防」で審議しますが、その審議を直ちに行うことにはなりません。予算が最優先ですから、予算が通るまでやってくれません。早くても二月末か三月です。それまでこの新法は凍結されるDそして否決されると、衆議院に再度回して与党の三分のこで可決されれば法律になる。これが通常の憲法上の手続きです。しかし、参議院でこの法案に六O日を割いている聞に、他の法案は一切審議されないわけです。つまり、その他の防衛関係の法案がたくさんあるにもかかわらず、残ったままになる。例えば、米軍再編やホストネ1ションサポート、あるいは国家安全保障会議設置法(国家安全保障会議を設立するための現在の安全保障会議設置法の改正)も審議できません。おそらく予算通過までは二カ月くらいかかり、それから参議院での審議中に何が起こるかわからない口もし、法律が成立しなければどうなるのか。幹事長は、通らなければ、おそらく新しい法律を出し直すことになるだろうと言うので、私は恒久法、つまり自衛隊を海外に派遣するために必要な一般的基準を示す法律を提出するのかと訊ねました。このことは憲法問題に絡むので福田総理は嫌がっており、かねてより石破防衛大臣が考えている構想でもあるのですが、伊吹幹事長の回答は、一般法を出すか、あるいは新しい特別措置法を出すかは、世論の動きを見て決めるというものでした。つまり、世論がそれを支持すれば、そうなるし、賛成してくれなかったら出せない、ということです。答えとしては実に見事ですが、一般法などすぐには通りませんから、海上自衛隊のインド洋派遣が通らなければ、いかに国益を失おうとも、二度と出せませんという話です。すると、今度は危険な地域に出ろ、という話になります。民主党内で今、議論になっている「対案」が問題になります。民主党内では、すでに議論を展開しています。先ほど申し上げたように小沢さんは「国連安保理決議があるISAFに、民主党が政権を取れば自衛隊を送るべきであるし、送るのは憲法上問題なし」と言い切っているわけです。そこで鳩山由紀夫さん(民主党幹事長)は、民主党として対案をつくるべきと言っているわけです。それを党内で審議したら、二つに意見が割れ、さらに武力行使の任務を持つような自衛隊の派遣はできないから、後方支援部隊であれば民政支援と組み合わせて派遣できるという意見もあるD現在、アフガニスタンには民政支援と組み合わせるPRTQsiロ己己岡山ogDE52ZD同,S51地方復興支援チ1ム)が派遣されています。PRTは技術者やJICAC2宮内WDHE2口出立。ロ巳打。。宮内州国立。ロ〉問。ロnM1u国際協力機構)などの民間人とこれを守る部隊で組織されています。現在、数千名の兵力を分散して、二五カ所にいる技術者、医療者などの専門家を警備して、軍民一体の地域復興チlムが編成されています。JICAの隊員は女性も含めアフガニスタンに入っています。すなわち、日本は自衛隊が入らずに、民間人が入っているということです。他国の軍隊に彼らを守ってもらって活動しているわけです。民主党内では、自衛隊が行って彼らを守ることに賛成する意見もありますD

しかしここで問題なのは、そのために自衛隊を派遣すること自体が戦闘部隊ではないのか。戦闘地域への自衛隊派遣は武力行使・武器の使用に充当するので憲法違反だと政府は言っていたのではないか口自衛隊派遣の法律をつくることは、民主党にとっては小沢さんの自衛隊派遣法に近づくことになる。それで民主党は国民から支持が得られるのかという議論もあります。

もう一つの議論は、そのことは、まさにイラクでやったことと同じではないか。イラクへの陸上自衛隊の派遣に民主党は反対したではないか。その時に反対しておいて、今度は派遣しろというのは矛盾していないか。民主党内では、官(直人)さんのいう民政支援だけにとどめ、自衛隊を派遣すべきではないという議論が強い。新法が必要なのは自衛隊を海外に派遣するからであって、JICAの隊員を派遣したり、一般人技術者の派遣には要らない。法律が要らないのに代案の法律案をつくるのは、論理的におかしいではないか。やはり無理だということで、先週末(一O月二O日)、民主党は「ヤメタ」という感じになったのです。

賛成意見の筆頭は前原(誠司)さんとか、鳩山(由紀夫)さんで、反対意見は菅(直人)さん、横路(孝弘)さんなど、旧社会党系の議員です。それよりさらに過激なのが小沢さんで、自衛隊を出せ、戦闘部隊でも何でも憲法違反ではないと言っているわけです。自衛隊派遣の是非をめぐって、民主党内には三つの意見があるということです。

この法案の成立によって、初めて民主党の意見が集約されるわけですが、法律提出の時点で民主党は割れるだろうと思います。そこに民主党のジレンマがある。なおかつ、割れるだけではなくて、必ず自民党のメスが入って攻撃される。これをどうやって切り抜けたらいいか、というのが民主党の問題です。

この問題の本質には、我が国が国際社会の中でどう生きていくべきかが問われています。それは国外というより、むしろ園内で問われているのであります。仮にこの法案が通らないとしたら、「ゴメンナサイ」で済む問題なのか。私は済まないと思います。

こういう状況にもかかわらず、一一月一六日に福田総理の訪米が計画され、シンガポールで開催の東アジアサミットでの日中首脳会談が決定しています。福田政権としては、日中首脳会談の前にどうしても日米首脳会談をしておきたい。なぜなら、ブッシュ政権は福田政権の行方にものすごく疑心暗鬼である口福田政権はアジア重視で、アメリカとの関係に重きを置いていない節、がある。福田さんはそれをよく知っていて、その疑念を払拭するために、まずアメリカと会談を行い、その後で日中首脳会談をやりたい。ところが、どう考えても、一一月一六日までにこの法律が衆参両院で通過し、成立して、これをお土産にすることはできないだろう。福田さんは他で協力するという話にもっていく以外に方法はないわけで、非常に厳しい選択を迫られていると思わざるを得ませんD

この特措法の問題は、単に海上自衛隊が頑張っているからこの法律をどうしようかということではなく、日本国という国が国際社会の重大な問題に、特に四0カ国近い国が血を流してこの危険な地域で活動しているときに、大国日本がどこまで関与するのがよいのか、どこまで犠牲を払うのがよいのか、を問われているのです。日本は戦後、一人も自衛隊員の戦死者を出しておりませんが、それを金科玉条のごとく掲げてこれを命題とし、一切の関与を拒否することで政権を維持することが、果たして国際社会の中で正しい選択なのか。党利党略ではなく、日本の国益はどこにあるのかということが今、問われているのだろうと思うのです。

この法律が通らなくても通っても、来春の予算成立後の七月開催のサミットは日本が議長を務めますので、通常国会の会期末に選挙はできません。従って総選挙があるとすれば、春の予算の通過直後か、サミット終了後になります。そこに行くまでに福田政権の支持率を多少盛り返すことができたとしても、現在の衆議院の議席を大幅に失うことは確実です。日本の政治のパターンは、だいたい三カ月か四カ月でゆっくりと繰り返していますが、現在はまだ参議院選挙の余波が残っていて、年内解散総選挙になれば民主党が大勝し、来春は均衡状態が保てる。ご承知のとおり、二OO八年三月末までに年金問題を解決すると安倍政権は約束したわけですから、これができるかどうか。そして、

真の意味でアフガニスタンへの日本の貢献はどういう形が望ましいのか。この二つをめぐって選挙が行われたとき、国民の審判は下ります。現在の与党が議席の過半数を取り安定政権を維持して、サミットまで持っていけるのか。あるいは一挙に民主党政権ができるのか。次の総選挙が別れ道になるのではないかDその別れ道の一つの大きなテlマが、本日私が申し上げた、国際社会に日本がどうかかわっていくのか、ということなのではないかと思います。

我々が努力して国民を説得できて、「テロ特措法」が衆参両院を通って何とか可決するという楽観的な考えを、私は捨てました。講演を通して、私は一人でも多くの国民に海上自衛隊が頑張っている姿を理解してもらおうと思っています。しかし、所詮はムダな鉄砲で、現在の民主党が参議院を完全に掌握しているという状態に変わりがない限り、メディアも倒閣運動を盛んに展開していますし、我が国の政治の状態は当分このままで、非常に厳しい政局運営を迫られるでしょう。

私の話はかなり政府与党に偏った見方ですので、皆さんの中に社民党、共産党系の人がおられたら、何というバカな話をするのだと思われるでしょうが、私の生き様なので何とも仕方がありません。我が国の置かれている現状が日本の国内政治といかなる関係にあるかということを、本日は一つの例を引いてお話をしたつもりです。ご清聴有難うございました。

(拓殖大学海外事情研究所所長・防衛大・理工・昭刊)(本稿は平成四年叩月沼日午餐会における講演の要旨であります)

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